有害指定図書








             カカシといわゆる世間一般の恋人という関係になって1週間。

             普通の人ではないというのは分っていた。

             世間の常識が通用しないというのも身にしみて感じていた。

             それらを知って尚且つカカシと付き合おうと思ったのは自分だ。

             しかし、どうしても我慢ならない事はあるもので


             「またそんな本を読んで!しかも歩きながら!恥ずかしくないんですか!!」

             アカデミーからの帰り道、とうとうイルカは不満を口にした。

             カカシは常に「イチャイチャパラダイス」という如何わしい本を手にしている。

             堂々と読んでいるということ事態世間の注目の的なのに、歩きながらでさえ読むと
             いうその姿には我慢がならなかった。

             しかもナルトたち部下を従えている時にすらもそれを手放す事がないという。

             最初に聞いた時にはよくもまあ同じ本を何度も読んで飽きないものだなーとか、実は
             カバーはイチャパラでも中身は忍術指南書等だったりして〜と思ったりもしたのだが、
             うっすらと頬を染めて嬉しそうにしかも顔の筋肉を緩めているその表情からして
             それはありえないなと思った。

             顔が僅かにしか覗いていないのがまた更なる怪しさをかもし出しており、もうどの
             角度から見ても怪しくて仕方がない。

             「んー別に恥ずかしいと思ったことはないですね〜」

             本から目を離し、イルカの顔を見てそう返してくる。

             何でこの人前見ないで歩けるんだ・・・

             やっぱ上忍なんだな〜

             が、今はそんな事は問題ではない。

             「俺といる時には読まないで下さい!」

             自分までカカシの用ように変態扱いされるのは我慢ならない。

             ふんっと鼻息も荒くそう言って部屋へ通ずる短い階段を上る。

             カンカンという安っぽい音を響かせて2階の自室へと向かっていたのだが、後ろから
             聞こえて来るはずの足音が聞こえなくて振り返るとカカシが階段の前で立ち止まって
             いた。

             「カカシさん?」

             怒ったのかな?

             確かに俺が口出しすることじゃないかもしれないけど・・・

             それでもやっぱり嫌なものは嫌なのであって

             「妬きもちですね。イルカ先生。」

             「なっ!!」

             先程まで視界で捕らえていた場所から一瞬でイルカの正面へと移動してきたカカシが
             嬉々とした表情で手を握ってくる。

             「いやー嬉しいですね〜」

             「ちっ違います!!」

             ニコニコと目を細めるカカシの手を振り払いガンガンと大きな音を立てて部屋へと
             向かう。

             「ええー違うんですか〜?」

             鍵を開けるために立ち止まった自室のドアの前。

             ヘラヘラと張り付いてくるカカシを無視して思いっきりドアを開け、そして閉める。

             が、しっかりと閉めたはずのドアの閉まる音は耳に入ってはこず、振り返るとドアを
             片手で止めたカカシの姿があった。

             「チッ・・」

             短く舌打ちしてカカシに背を向け靴を脱ぎ捨てて奥へと入っていく。

             「何でそんなに嫌うんですか?」

             きちんと鍵をかけ、イルカの靴までそろえたカカシが背後から聞いてくるのに振り
             返る。

             「品性の問題です!」

             「俺の品性なんてとっくに地の底ですよ。」

             「・・・・・」

             自覚はあったのか・・・

             「で、イルカ先生はこの本がお気に召さないようですが読んだことあるんですか?」

             「えっ?・・いや・・・・・」

             「読んでもないのにけなすのは良くないと思いますよ〜」

             「いやっ・・でも18禁って・・・・」

             イチャパラをずいーっと差し出し、詰め寄ってくるカカシに後退する。

             「あんたもう25でしょう。しかも18禁だなんて誰に聞いたんですか?」

             「へっ違うんですか?」

             確かかの三忍の自来也作のエロ本だと聞いたような気がしたんだけど・・・

             「違いますよ〜。ほら、イチャパラの禁止マークの中何も書いてないでしょ。」

             言ってカカシが突き出していた本を裏返す。

             カカシの言葉に差し出されているイチャパラをまじまじと眺める。

             確かに、カカシの言う通り何が禁止なのかは記されていない。

             「本当だ。18禁なら中に18って数字が入りますもんねー。何を禁止しているんで
              しょう?」

             「読めばわかりますよ。読んでみます?」

             「遠慮しておきます。」

             何が禁止なのかは分らないが、ろくなものではないのは確かだろう。

             「まーまーそう言わずに。」

             頬にぐいぐいと押し付けてくるのを顔をそらして逃げる。

             「絶対に嫌ですーっっ」

             「そんなに嫌がらなくてもいいと思うんですけどね〜いろいろと勉強になるのに・・・」

             涙まで滲ませて拒否するイルカにさすがのカカシも無理強いをするのが躊躇われたのか、
             溜息を付いて突きつけていた本をポシェットにしまった。

             どんな勉強だよと内心で毒づきながらもほっとしてイルカは夕飯の支度をすべくキッ
             チンへと移動した。





             食事を終え、ふたりぶんのお茶を淹れる。

             温かいお茶でほっと一息吐いたところで先程のやりとりを思い出した。

             「そういえばあの本、本当は何を禁止しているんですか?」

             「ああ。男女のイチャパラ禁です。」

             「は?」

             にっこりとそう述べたカカシの言葉に思わず間の抜けた声が出る。

             男女のイチャパラ禁って・・あの本のタイトルってイチャイチャパラダイスだよな?

             しかも表紙にはイチャパラバカップルのイラストが・・・

             なのになんでイチャパラ禁なんだ??

             「だから、男女の恋愛が禁止されている本なんです。」

             サッパリ分らないといった風体のイルカをクスクスと笑いながらカカシが説明をする。

             男女の恋愛禁止?

             「それって未婚女性は結婚するまで男を見てはならないとかそういう・・・」

             「違います。」

             あー何か嫌な予感がしてきた・・・

             でもなー

             まさかな〜・・・

             ダラダラと背中に汗が伝う。

             「それじゃーロミオとジュリエットみたいな悲恋もの・・・」

             「違いますってば。男と男のイチャパラです。」

             「男と男・・」

             っていうことはアレだよな〜

             この人男を好きになったのは俺が初めてとか言っていたけど、本当は真性の同性愛者
             なんじゃ・・・

             「初心者向けのものからマニア向けのものまでバッチリですよ。イルカ先生との愛の
              プレイに向けてこの不肖はたけカカシ、日々努力を重ねていますっっ!!」

             拳を掲げての力強い宣言にはっとする。

             剥き出しの写輪眼が怪しげにキュルキュルと回っている。

             「さあ、愛し合いましょう!!」

             「ギャーッッ!!」


             ずいーっと荒い鼻息をさせながら近づいてくるカカシの顔。

             しきりに抵抗を試みはするが所詮は中忍と上忍。

             カカシに叶うはずもなく、イルカはイチャパラ初心者編を身を持って体験することに
             なったのであった。








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             あれ、中に何も書いてないですよねー
             ホンマは何禁なんだろう。。。



             翠空花の叶さんが、相互リンクの記念にと書いて下さいました。

             ジャンプ突っ込みネタ!(←図々しくもリクさせて頂きましたっ)

             そうですよねー、私も言われて初めて気付きました。確かにあの本の表紙には、
             何が禁止なのかは、一言も書いてないのですよね。

             イルカ先生、カカシのあんな事やこんな事は、もう今更仕方ないです。全ては
             惚れた弱み、この際男らしく諦めましょう。

             イチャパラな本に嫉妬したところで、何も始まりませんし?(笑)

             そして私ってば、「イチャパラを読んだ際の、上忍連中の反応話」とか、是非
             書いてみたくなっちゃいましたよぉ〜。


             叶さん、素敵な刺激(笑)を、どうもありがとうございました!


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